安心・安全のための費用の経済的合理性が行方不明になる理由

日本人はなんでもかんでもリスクがないことを求めすぎる!

そう、リスクに対する対策に経済的な合理性があるのか、ちゃんと検証していないように見えるのだ。とはいえ、あらゆるものが過剰に安全とも言い難い。平時には安全のためと称して時に無意味なほど大きなコストが投じられる一方で、本質的にはリスクが放置されたまま事故が起き、膨大な費用を納税者が負担するという間抜けな話を私たちはいくつも知っている。

誰もが楽に暮らしているわけではない。安全や安心に費用をかけるにしても、無尽蔵に費用をかけてよいはずはないことは明らかである。だからといって取り返しのつかない事故を起こしてはならない。

いったいどうやったら、安全対策の経済的合理性は判断できるのだろうか?

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「公共事業は儲からなくてよい」という間違い

公共事業の民営化が話題になると、こんな声も聞こえてくる。

『「老朽化で維持コストが今後膨らむ」ようなものを民間に任せれば上手くいくはずがない。普通は維持コストが膨らんで利益が出せないような事業だからこそ公共が負担するんじゃないのか?』

でも、普通って何だろうか? 続きを読む 「公共事業は儲からなくてよい」という間違い

公営事業の民営化のあるべきかたち

民営化という言葉を使うと、悪徳業者が荒稼ぎするイメージを持つ人もいる。そのような考え方は、ある観点では現実的であるが、本質的には間違っている。

ここ数年、政府が水道事業の民営化を議論しはじめている。『赤字だからと「国立大学」や「郵便事業」を民営化してきた国が今度は「水道事業」を民営化すると言い出した……』といって嘆く人もいる。だが、問題なのはそれらが「民営化された」ことではない、「ちゃんと民営化されなかった」ことなのである。

公的事業の民営化を議論するならば、完全に政治の干渉のない民間事業への移行を目指さなければ意味がない。

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NHK受信契約の強制と天賦人権論

NHKの受信契約を強制することができるとの最高裁判決が話題だったので、メモを残す。(以下、カギかっこは判決要旨から。)

「放送は、憲法21条が規定する表現の自由の保障の下で、国民の知る権利を実質的に充足し、健全な民主主義の発達に寄与するものとして、国民に広く普及されるべきものである。」

本来の意味では、「知る権利」はそもそも言論・表現の自由を政府が邪魔しないことによって生じるものだ。それがひっくり返って、知るべき情報を政府が管理して与えることを「知る権利」と呼んでしまっているのである。 続きを読む NHK受信契約の強制と天賦人権論

無責任で危険な公共事業

安心でも安全でもなんでもよい。せめて、問題が起きたときに賠償するのが誰なのかくらい、最低限はっきりさせるべきだろう。公共事業や政府の関与した国策事業といった公営事業の事故や失敗をみるたびにそう思う。

責任を負うというのは頭を下げることや言い訳をいうことではない。最終的に問題が起きたときにその費用を弁済することである。誰かが経済的責任を負ってリスクを評価できるというなら、その人が責任を負って事業をすればよい。だが、そうでないなら始めるべきではないだろう。 続きを読む 無責任で危険な公共事業

国鉄清算事業団

民営化のメリットは、収益性のある事業が生き残る一方で収益性のない事業が淘汰され、しかも事業の失敗の責任が納税者に転嫁されたりしないことである。望んで出資した出資者の責任で事業を行い、事業者が自発的な判断で経営内容を取捨選択し、さらに新しい事業者の参入が自由に行えること。そして、市場での競争に晒されることが大切だ。

もう一つ大切なのは、公営事業によって垂れ流される赤字によって納税者にそれ以上の損失が発生することを止めることにある。

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