かつて日本のサラリーマンの給与は右肩上がりが普通だった。しかし、いまではそんなことが当たり前ではなくなっている。そして、その傾向はこれからもっと大きくなっていくはずだ。
日本の雇用規制は次第に強化されてきた。最低賃金は上昇し、労働法はより厳しく運用されるようになった。契約社員の5年ルールも追加され、残業規制も強化された。規制が増えるにしたがって、次第に雇用契約を結ぶメリットが低下してきている。
雇用契約を結ぶこと自体のコストが上昇し、それが賃金水準や期待される収益・株価に織り込まれるにしたがって、そんな水準では雇われるメリットがないと労働者が感じるようになってきた。
他人の労働に投資して利益を得る、あるいは、労働者の成長に投資して利益を回収するというモデルが規制によって採算を取れないものに変化したので、投資家の好む投資対象も人を沢山雇う事業から、人を直接雇わずににすむ事業に変わってきているのである。
高度な技能を有する一部のエリートを囲い込むための最小限の雇用契約は残るかもしれないが、下辺側で人材を雇用することはますます非合理になっていく。
今後は、人手によって行われていた作業は、次第にロボットやネットサービスを介して行われるようになるだろうし、それを制御するソフトウェアやそれが提供するコンテンツは、雇用契約を介さずに製作者に直接インセンティブを支払う方向に調整されるだろう。
雇用契約が消えていくにしたがって、当人が自分でビジネスを構築していくことでしか生きるしかなくなる、あるいはそれができない人は単にじり貧になるしかない。