非正規社員が増えた代わりに減った数

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日本の自営業者が減っている。総務省の公表している労働力調査によれば、1960年には2067万人が自営業者またはその家族従業者だった。この数字は、2016年までにはおよそ1/3の682万人まで減った。

非正規社員が増えて正社員の椅子が減っていると思っている人も多い。けれども、非正規社員が増えた代わりに減ってしまったの正社員の椅子ではない。下図のように、非正規の従業員が増えるのに並行して着実に大きく減ったのは実は自営業者数なのである。

1970年代以前は「いつまでもサラリーマンなんかをやるのは、商売を持つことができない半人前」とみられるほどだった、月給取りは稼げないと言われていて、生業を持ってこそ一人前だったのだ。けれども今では、多くの人が賃金労働者を目指す。そして結局、稼げていない人がいっぱいいる。

労働者保護の口実で作られた規制によって、起業して経営者になるコストは割高となっている。人を雇うことも難しくなった。とくに、最低賃金法と解雇規制が小規模事業者から簡易な労働力を調達する選択肢を直接的に奪っている。一方、いったんサラリーマンとして雇用されることさえできれば、一定額の月給が補償され、解雇されることもほとんどない。資本の少ない人々は、自ら事業を維持するよりも、サラリーマンを選ぶ方がマシになり、家業を持っていた者たちもどんどん商売を畳んでいった。

さて、制度によって調整された状態は、賃金労働者が楽な世界になっただろうか?新しい事業が生み出されない社会では、求職者の競争率が高くなる。逃げ道の選択肢が減っていくことで、労働者は雇用主に対する価格交渉力を失い、次第に低待遇を受け入れるようになっていった。

http://shibari.wpblog.jp/archives/14078

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