朝鮮半島への米国の介入が取りざたされている。だが、そもそも朝鮮半島を分断させ、大韓民国の分離と建国を誘導したこと自体が、米国政府の介入によるものだ。
中南米への米国の干渉政策もそうだが、米国政府自身がまずその失敗をちゃんと認めないとダメだ。そして、ちゃんと認めることはないだろう。現在進行で世界中でやってることだし、それなしでは米国政府自体が生き残れないだろうからだ。
日本でも、日米安保を壊すような出来事があったら、現在の日本の体制は存立を脅かされるだろう。 あまりにも多くの利権がそこにぶら下がっているからだ。
日米安保に反対するべきなのは、「戦争になるから」などという曖昧な理由ではなく、それが本質的に抵抗権を否定するものだからである。日米安保条約は、国民の監視を離れた外国の軍隊の駐留によって内乱を予防することで国民の抵抗権を奪った。国内の反発がどれほど強くても政策を政府が押し通すことができる状態を作ったのである。
そして、あまりにも多くの利権はそこにぶら下がってしまった。政府は肥え太り、今や野党でさえ日米安保前提の利権をいくつも抱えていて、日米安保廃止を前提とする議論を避けるほどである。政府の肥大は、結局のところ共産化への道である。
「米国が介入していなければ、ソ連・中共の支援を受けた共産勢力が朝鮮半島を統一したはずである。当然日本への脅威は現在の北朝鮮の比ではない。」という人もいる。たしかに、米国政府やその傀儡となった政府は、そういって宣伝して各地に政府を肥大させることを正当化してきた。日本も韓国もそうだし、米国も例外ではない。だが、反共を口実に政府を肥大させることは、それ自体が共産化への道であって、反共になっていない。共産主義の脅威を口実に自ら共産化を試み、そして失敗する。
ベトナム戦争の前には朝鮮戦争があった。だが、米国が干渉せず大韓民国の建国を強行しない前提なら、朝鮮戦争は起きなかっただろう。韓国建国において乱暴だったのは、米国政府とその傀儡だった南朝鮮政府である。李承晩の政府は、疫病の蔓延に対処できず、価格統制に失敗し、飢饉を生み出した。「共産主義者がやってくる」前に、そもそも米国が計画経済の実験を試みて失敗し、独裁的な恐怖政治に陥ったのである。内政干渉の下での統制の失敗がなければ、左派への支持拡大を恐れる必要もなく、共産化の動機も北朝鮮の建国宣言の口実もなかっただろう。
「干渉しないで放っておけば共産勢力は侵略によって領域を拡大する。」これは、冷戦そのものの口実であり、冷戦下で米国に作られた各地の傀儡政府のプロパガンダでもあった。
だが、どんな体制であっても、多数の人が国による保護を信じなくなれば崩壊する。国家が国外の軍事的脅威から守るという口実がなければ、自由を強く制限し続けることはできない。計画経済は必ず失敗し、肥大した政府は維持できなくなるからだ。「干渉しないでほっとけば、共産主義体制は必然的に行き詰まる」それをあえて歪めるべき理由などそもそもない。
外から軍事的圧力をかけることは、共産主義体制の口実を与える結果になる。さらに米国政府は、自ら社会主義政策に走って計画経済を試み、統治にも失敗した。外から圧力をかけることを口実に自らが政府を肥大させ、共産化のレールに乗っかるのは間抜けだ。計画経済が長期間維持拡大できるという共産主義の間違いをわざわざ前提としているからだ。
日本政府も、北朝鮮を口実に政府を強化し、政府予算を膨らませ、自由を奪い、共産主義体制への道を歩んできた。日米安保を無理やり押し通し、そのためにあまりにも多くのタテマエを作って辻褄合わせした。
対立勢力を政府が取り込もうとするあまりに作られた利権や制度、国民年金も、農業基本法や減反政策も、道徳の授業、、、政府が外部の脅威を口実に肥大化したものはあまりにも多い。その失敗のツケは全て将来に先送りされている。
国防予算は小さく、社会福祉予算は大きいという人もいる。けれども、そういう問題ではない。共産主義を明言していようと、自由主義を標榜していようと、それが政府である限り、計画経済へと導こうとする。
社会福祉予算を増やし続けているのは自民党に他ならない。一方で有権者の理解を得ることなく軍事費の負担や法制度を押し通すとき、はるかに高額の社会福祉予算を取引のカードとして場に置いたのも自民党政府である。そうでなければ政権を明け渡すことになるから、保守を標榜する政党が露骨な社会主義政策をなし崩しに選んでいったのだ。
反共を口実とした国防予算の膨張は、政府の財政規律を破壊する。その先にあるのはただひたすらに政府の膨張である。それは共産主義への道に他ならない。
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