公営保育園の拡充を求める政治的な声が強まった。その大きな流れを作ったのは、実は経団連と連合、つまり、大企業の利益を守るための政治団体と、大企業正社員の利益を守る労働組合だった。
経団連と連合、つまり大企業とその労働組合が、納税者負担での保育を要求している。両者とも、「社会全体で」負担するべきであると声高に主張する。なぜ、経団連や連合は保育園の拡充を求めるのだろうか?
政府・与党は、子育て支援や人材投資への予算配分の優先性、重要性について国民の理解を求めるとともに、必要な税負担の増大についても、恐れることなく世論を形成していくべきである。
– 経団連「子育て支援策等の財源に関する基本的考え方」2017年4月27日
子ども・子育て費用を社会全体で負担し、その財源が確実に子どもと子育て支援に使われるシステムをつくります。
-連合 「子ども・子育て応援シンポジウム」(2010 年 4月10 日)
経団連にとっては、より安価な労働力を求め、安価な労働力を確保するための負担を納税者に転嫁したいからである。公営保育が存在しない場合は、保育に必要な費用ぶんを雇用主が余計に払わなければ女性を雇うことができない。その負担を納税者に押し付けることができれば、企業は安く人材を雇用することができるようになる。
連合にとっては、大企業の従業員で構成する組合員の取り分を増やしたいためである。そもそも保育園というものは、所得の少ない家庭を補助するために設定されたものだった。これを大企業正社員でも利用可能なところまで拡充させれば、本来負担するはずだった保育費用の負担を雇用主に求めなくても、他の納税者に押し付けることができる。費用を負担する納税者とは、子育てをしない人たちである。そして、低所得者の多くはすでに子育てを諦めている。
子育て支援の拡充は、低所得者から大企業やその従業員に所得を移転する効果が期待できる。政府が支払う子育てのコストは税金として広く納税者に請求される。この保育のコストは、それが公営であるがゆえの非効率さもあいまって、園児一人当たり月に20万円~50万円という高価なものになっている。
子育ての費用の多くを政府が代わりに支払うことになったので、企業は安上がりに労働力を手に入れることができるようになった。労働市場では、賃金が安くても働く女性が増加し、結果的に労働者全体の賃金水準が低下する一因になった。それで実現したのは、「女性が共働きできる社会」ではない、「女性も働きに出ないと子育てができない社会」だった。
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